2022.12.2710.人や国の不平等をなくそう

多様性が企業に負の影響を与える?

「SDGs」という言葉とともに、「多様性」や「ダイバーシティ」といった言葉をよく聞くようになったという方も多いと思います。
特に企業においては、少子高齢化による労働人口の減少や、グローバル化によって広がる多種多様な価値観を持つ顧客のニーズおよび多種多様な人材や働き方に対応すべく「ダイバーシティ経営」を推進することが求められています。
「ダイバーシティ」とは「個人の持つあらゆる属性の次元」を意味し、年齢や性別のように目に見える違いのみではなく、趣味や習慣、スキルレベルのように内面的な特性をも含む、人材のあらゆる特性を意味します。

ダイバーシティ経営とは、このような人材も持つあらゆる特性から生まれる、異なる考え方を活かすことで、新たなアイデアを生みだし、環境の変化に対応できる企業経営を元とした経営戦略と言えます。

このように文章を読めば、なんとなく「重要そうだ」と感じますよね。
でもそもそも多様な人材がその能力を最大限発揮できる機会を提供できなければダイバーシティ経営によって負の影響を及ぼすこともあるのではないでしょうか…。

そこで本記事ではダイバーシティ経営が失敗してしまう要因について紹介いたします。

多様性の推進が会社に負の影響を与えてしまう状況は?

ダイバーシティ経営でよく起こることとして組織内ではダイバーシティの確保がある程度実現しても,ダイバーシティへの取り組みが頓挫するというケースがあり、「人は集めたけどその後どうすればいいの?」状態に陥ると言うことです。

それではどのような企業でダイバーシティ経営は失敗してしまうのでしょうか。

① 従来型マネジメント
例えば「家事や育児にあまり関わらない大卒の男性社員」を戦略の中心とした人事制度による従来型のマネジメントの仕組みを使用してしまうと、どれほど制度が整っていても、そのペルソナに当てはまらない社員の仕事への意欲は低下し、能力を十分に発揮できず、成果が出る前に失敗してしまいますよね。

そして現在は多くの企業が「女性活躍」を掲げている中で、産休・育休の制度や生理休暇など、あらゆる女性が働きやすいような環境を作る人が中高年の男性社員だと的はずれな制度設計、運用になる可能性もあります。

② 勤務体制、働き方の固定
次に勤務体制や働き方についても、一様に「新卒採用、男性正社員、長期継続雇用」を前提にしてしまうことで、それに当てはまらない人材の活躍の機会は制限されてしまいますし、
勤務する場所や時間などに制約のある社員にも活躍できる機会を拡大するためには、リモートワークやフレックス制のような多様な働き方ができるように細かな人事管理を行わなければなりません。

③ 従来型の教育・制度
従来の教育制度では、社内で多数派・主流派でなかった人材のビジネススキルアップのための機会が少なく、 スキル向上のための有形無形の社内資源に十分にアクセスできていない場合がみられます。
そのような状態のままだと、たとえ抜擢・登用したとしても本来の力を発揮できないままに挫折してしまいます。
世の中の変化が加速していく中で現在、そして未来に着目した研修マネジメント(SDGs、AIなどの新技術等)も行う必要があります。

ダイバーシティ経営が成功するには?

ダイバーシティ経営が失敗してしまう要因についてご紹介してきましたが、それを踏まえてダイバーシティ経営推進のために具体的にすべきことは何でしょうか?

① 経営理念、ダイバーシティ経営の方針の明確化
ダイバーシティ経営の成功にはすべての社員が目指すべき理想像とその考え方を共有し、自社なりの戦略として具現化させる必要があります。
ダイバーシティに関する指針、具体的な行動目標を定めることで、具体的な施策を実行に移すことができるようになります。

② 人事制度、人材登用の見直し
ダイバーシティ経営の推進に関する指標として、登用率や採用率などの数値を上げることを目的化するのではなく、何のためにダイバーシティ経営を進めるのか、そのためにはどのような人材に、どのような業務を任せ、どのような成果を上げることが必要か、という点を常に明確にする必要があります。

③ 勤務環境・体制整備
組織全体の在り方を見直すことも重要です。
例えば会社としてダイバーシティを推進する専門部署を設け、担当者はダイバーシティ推進に係る人事施策を全社的に広め、認識させるだけでなく、ダイバーシティ推進のための施策を計画し、修正していくという体制も必要になります。

また、日本には「諸外国と比べると」人種や宗教、社会的階層などの属性上の多様性は少ないからこそ、働き方のダイバーシティを重視していったほうがより効果的かもしれません(労基旬報平成15年10月15日)。多様な働き方に対応できる勤務環境を整えることもダイバーシティマネジメントを進める上で重要であると言えるでしょう。

④ 社員の意識改革・能力開発
また、登用された人材が能力を十分に発揮できる環境の整備が求められます。
配置・転換などを実施し、人材の経験やスキルの多様性を高めていくことが重要です。経験やスキルの多様性が高まることで、個々の人材が発揮できる能力の引き出しが増え、活躍の機会と可能性を広げることができます。その際、人材育成上の意義を明確に伝え本人の成長意欲を高めることも大切です。

⑤ DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)経営
DE&I経営とは「多様な人材を組織に取り込み、真にインクルーシブな労働環境を実現することで、イノベーション創出につなげるアプローチ」であり、
多様性を推進するだけではなく、公平に機会や会社リソースにアクセスでき公平に評価され(エクイティ)、自身が組織に認められ受け入れられている(インクルージョン)ことは、多様な人材がその能力を十分に発揮できる環境を整えるために重要なことだと考えられています。
(2022 会誌「情報処理」)

実際にうまくいっている事例は?

経済産業省の「令和2年度 100選プライム」(出典:ダイバーシティ経営企業 100 選ホームページ http://www.diversity100sen.go.jp/)から、多様な人材の活躍を経営成長のエネルギーにしてきた会社の事例をご紹介します。

① BIPROGY株式会社(旧名・日本ユニシス株式会社)

人材戦略


社員の考え方や価値観を形作る様々な「役割」に視点を当てる事で価値創造を生み出す適切な人材ポートフォリオの実現を企図

活躍推進の取り組み


[経営陣の取り組み]
・中期経営計画にダイバーシティ推進を含む「風土改革」を重点施策として明記、ガバナンス体制にも反映しトップダウンの推進力強化を図る
・ダイバーシティの専任組織とグループのSDGs経営、ESG経営を推進する意思決定機関として2つの委員会を設置し、メリハリのある推進体制を実現
・経営幹部及びそのパイプラインにおいてもダイバーシティ経営への理解・実践を重要なコンピテンシーとして位置づけ

[現場の取り組み]
・イノベーション創出とワークライフ・バランスを実現する多様な働き方とそれを支える働き方改革
・推進部隊から現場主導のダイバーシティ推進となる行動変容の働きかけ
・個の多様性を高め、チャレンジする組織風土の醸成に向けた仕組みを提供

[外部コミュニケーション]
・更なる企業価値向上を目指し、経営トップをはじめとした情報開示と対話を強化
に取り組んだ。

成果


・新規事業創出プログラムや、多様なステークホルダーとのコラボレーションで生まれたビジネスが拡大し、「注力領域」(社会課 題の解決が期待され、ビジネスエコシステムや DX 関連ビジネスなど、成長が見込めるビジネス領域)における売上も堅調に推移。
・自主参加型プログラムへの参加者数や、イノベーションを意識している社員の割合、個を活かしたチーム運 営を実感する社員の割合が増加し、エンゲージメントスコアは右肩上がりに上昇。

② 大橋運輸株式会社

人材戦略


社員一人ひとりが能力を発揮できる環境の整備と ともに、新規事業を牽引する人材の確保・育成が 課題

活躍推進の取り組み


[経営陣の取り組み]
・ダイバーシティポリシーを設定し、多様な社員の活躍 が同社の事業を支える根幹となることを組織に浸透
・社長・総務・ダイバーシティ推進事務局が連携し、 安全衛生推進室長の監査役配置によりきめ細かな 取組推進を実施
・社外の専門家や関係機関との連携を通して新たな 視点・意見を取り入れたガバナンスへ

[現場の取り組み]
・柔軟な就業体制と業務負荷の低減を図り、社員全 員が安心感を持って働ける仕組みを整備
・管理職自らのダイバーシティへの理解と実践を評 価に組み込み、行動を伴ったダイバーシティマネ ジメントを促進
・個別のキャリアプランを考慮した能力開発の機会 を提供、さらに社外セミナーでの講演機会等を通 して高い目的意識を醸成

[外部のコミュニケーション]
・多様なステークホルダーとの対 話を通し、地域におけるダイバーシティ経営の旗振り役に

成果


多様な経験や特性を持つ人材が充実感を持って働ける環境の整備により、事業の発展・拡大が実現、新たな人材獲得につながる好循環へつなげることに成功しています。

大成が進めるダイバーシティ推進、多様性活用の取り組み

大成が目指すのは国籍やジェンダー、障害などにとらわれず、誰もが活躍できるダイバーシティ化です。その実現に向け、多様な人材の能力を引き出し、最大限に活かすための取り組みを展開しています。

●ダイバーシティ室を新設

多様な人材の力を最大限に発揮できる仕組みを整える
大成は近年、ロボット、IoT、DXなど、従来の業務領域になかった製品・サービスを開始するとともに、アジアを中心としてグローバルに事業を展開しています。こうした新たな取り組みを推進し、さらなる変革を進めるためにも多様な知識、志向、価値観、スキルを持つ人材を活用することで、組織のパフォーマンスを高めていく必要があります。また、SDGsとあわせてDE&I※を重視し、あらゆる人材が安心して働ける職場環境の整備をさらに進めていかなければいけないと考え、2022年4月1日にダイバーシティ室を新設し、「多種多様な人材が様々な環境で活躍し、変わりゆく時代と共に組織を創る。大成株式会社はDE&Iを推進します。」というダイバーシティポリシーのもと、女性活躍、高齢者の健康促進、外国人教育機会の増進、障がい者の積極的な受入れなどの企画・運営を推進しています。

●NxTプロジェクト

ネクスト世代のフレッシュな発想とパワーを活かす
大成の若い世代の社員が、会社のみならず社会の課題をテーマに未来像を話し合い、2018年に立ち上げたプロジェクト「NxT(ネクスト)」は、テーマや目標ごとにチームに分かれてそれぞれ積極的に活動しています。例えばベトナム・ミャンマーの児童養護施設に資金や物資を支援。役割ごとの担当者を決め、募金・物資回収を呼びかけ、物資の仕分け・送付作業まで行いました。2022年6月時点で8チーム(全34名、平均年齢31歳)が活動中です。現在はSDGsに関する新規事業も各チームで企画し、実現に向けて取り組んでいます。

まとめ

本記事ではダイバーシティ経営が失敗する要因について紹介し、具体的にすべきポイントについて紹介しました。
失敗する要因
① 制約のない社員を対象とした従来型マネジメント
② 勤務体制、働き方の固定
③ 従来の教育・制度の継続

成功するポイント
① 経営理念、ダイバーシティ経営の方針の明確化
② 人事制度、人材登用の見直し
③ 勤務環境・体制整備
④ 社員の意識改革・能力開発
⑤ DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)経営

当社は、ダイバーシティ経営を推進するべく、上記成功するポイント①~⑤を積極的かつスピーディーに取組み、あらゆる人材にとって公正な制度や体制の整備、それぞれが組織に受け入れられる教育・評価の導入を推進し、多様な人材がその能力を十分に発揮できる環境づくりに努めています。

参考・引用文献
有村貞則. (2000). ダイバーシティ・トレーニングの失敗とその原因. 山口經濟學雜誌, 48(4), 791-840.
「ダイバーシティの実現」 労基旬報 平成 15 年 10 月 15 日号, 労働実務.
経済産業省(2015). 価値創造のためのダイバーシティ経営に向けて
経済産業省(2020). 令和2年度ベストプラクティス集
NOMURA, R. (2020). 企業組織におけるダイバーシティ研究の動向と展望. 東京大学大学院教育学研究科紀要, 60.
及川政志. (2022). アクセシビリティのプラクティス―「誰一人取り残さない」 ための情報技術: 招待論文: 5. 障がい者雇用とイノベーション─ 障がい学生向け実践的インターンシップの経験から考える新たな人材戦略の可能性─. 情報処理, 63(11), d65-d81.
谷口真美. (2008). 組織におけるダイバシティ・マネジメント. 日本労働研究雑誌, 574, 69-84.

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