2022.04.1510.人や国の不平等をなくそう

外国人が日本の文化に合わせる?or日本人が多様性を考慮すべき?
ダイバーシティの時代に、多国籍スタッフが働きやすさを考えてみた。

労働人口減少という日本の深刻な社会問題や人権問題に対応すべく、重要視されるようになった“ダイバーシティ”という概念。年齢や性別、国籍(人種や民族)などの様々な観点で人材の多様性を認め、あらゆる働き方を受容していこうという考え方が、多くの企業で取り入れられ始めている。
大成株式会社には、現在21カ国507名の多国籍スタッフが在籍(※)。そして2022年4月、さらなるイノベーションが創造される環境を目指し、ダイバーシティ室が新設された。このように、取り組みが積極的な姿勢で進む中、第一線で働く多国籍スタッフたちは、どう捉えているのだろうか。中国とベトナム出身の計3人が、より働きやすい環境づくりについて本音を語った。
※2022年4月1日現在

Profile
黄イブン 中国・上海市出身。幼い頃から母親が日本で仕事をしていたことから、日本に対して親近感を持ち、自然な流れで来日。日本の大学院で社会学を学んだ後、新卒で大成株式会社に就職。DX事業部に所属。

現在、大成のビルメンテナンスのノウハウ、特に警備の視点を活用した新しい事業を開発する業務に携わっています。また、監視カメラを開発する中国企業と提携し、現地工場とのやりとりも担当しています。ビルメン業界の仕事は、大学院で学んだ社会学とは全く違う分野なので、日々勉強が必要。難しい部分も多くありますが、毎日新しい刺激を受けられるので、楽しいですね。

会社の雰囲気はとてもアットホームだと思います。かつて日本のドラマで、上司が帰らないと部下も帰れない、という状況を見たことがあるのですが、私が置かれている環境ではそのようなことはありません。上海の友人はいつも、中国の会社は勤務時間が長いと言っていますが、私には残業はほとんどないんですよ。居心地が良いので、できれば定年までずっと働きたいと思っています。

一方で、あえて外国人の視点で述べさせていただくと、私たち外国人が日本で仕事をするにあたり、なじみにくいと思うことが2つあります。

1つ目は、日本はトップダウンの組織が多いことです。上からの指示で仕事を進めなければならないと、目的を見失うことが多く、孤独になりがちです。外国人はこのような構造に慣れていないから、恐らく疎外感を感じるのではないかと思います。下の人達がチームワークを組んで、一から仕事を進めていけば、自然とコミュニケーションが生まれますし、将来独り立ちしたときに困惑しないと思うんです。

2つ目は、外国人は日本の社会常識やルールになじむのが、とても大変だということです。“なぜこうなるんだろう?”と思うことが仕事上や日常生活を送る上でたくさんあります。上からの指示によって1人で仕事をしていると、相談する相手がいないので、疑問を解決できないままになってしまうんです。身近に教えてくれる人がいるといいですね。

日本の方は優しいので、間違っていたり、反対意見があったとしてもストレートに言いません。でも、お互いに逆の視点でアイディアを出し合ったほうが、いいものが作れるのではないでしょうか。もう少しコミュニケーションが取りやすくなればいいと思っています。

Case2 ベトナム出身 リュー テイ ツウ チン編
「日本のマナーや決まり事について、研修を設けたらどうでしょうか」

Profile
リュー テイ ツウ チン ベトナム出身。ベトナム・ホーチミン市にて日本語学校の講師、大成の海外子会社(ベトナム)での勤務を経て、結婚を期に4年前に来日。大成株式会社東京本社の社員となる。現在は海外事業室にて、本社とベトナム子会社間とのコミュニケーションのサポートに従事している。

大成は会社の雰囲気がとてもいいと思います。同僚のみなさんは話しかけやすい方ばかりですし、いつでも相談に乗ってくれます。新しいことにチャレンジさせてくれる点も、とても気に入っています。日本の会社は、決められたスケジュールに対してみんなが協力して仕事を進める点が、素晴らしいですね。ベトナム人ができないというわけではないのですが、日本人は本当に効率性が高いです。こういう環境に身を置くと、自分も時間を守らなきゃ、と自然と思えてきます。

私はベトナムでの就業経験を経た後に来日したので、ベトナムと日本との違いに、最初は少し戸惑うこともありました。これは多くの外国人が感じる部分だと思うのですが…、日本は決まりごとが多いですよね(笑)。社会常識やマナーなど、日本人だったら当たり前だと自然に思えることも、外国人から見ると“なぜ?どうして?”と感じることがたくさんあります。

例えば名刺交換の際、外国人は名刺の向きや渡し方にマナーがあることすら知りません。「お茶かコーヒー、どちらがいいですか?」と聞かれたら日本人は「どちらでも構いません」と相手の都合を尊重すると思いますが、ベトナム人はその時飲みたいものを素直に言うのが普通です。それと、日本語はほとんどの場合主語が省略されるので、誰の意見か分からない、ということもありました。そういう違いって、仕事を進めていくコミュニケーションの上で、すごく大切じゃないですか。空気を読まなければいけないけど、読みすぎても誤解が生じて逆効果ですし(笑)。最初は相手が言いたいことをうまく理解できないことで仕事がスムーズに進まなくて…。カルチャーショックでしたね。

そういった自身の経験から、多国籍スタッフがもっと働きやすくなるためには、仕事の上での決まり事や、日本の常識についての研修があれば助かるのではないかと思います。日本人のみなさんが常識だと思っていることでも、外国人の自分だけが知らないことはたくさんあります。もし何か失礼なことをしてしまったら、「それはダメ!」とはっきり教えてほしいです。日本人は、ダメと言ったら関係が気まずくなるのではないかと思うかもしれないですが、はっきり教えてくれたほうが両者の関係がもっと良くなるのではないかと私は思っています。どれほど日本語を勉強してから入社したとしても、日本の社会的な常識まで理解しているわけではない、ということを認識していただけると嬉しいです。

Case3 中国出身 賀煦洋が くよう
「“郷に入れば郷に従え”は果たして正論でしょうか。一方的に合わせるより、むしろ外国人に対する理解度を高めるべき時代背景なのでは?」

Profile
賀煦洋が くよう 中国・上海市出身。日本の大学への留学をきっかけに来日し、卒業後新卒で大成株式会社に総合職として入社。外国人社員第1号となる。2つの部署を経て、現在は東京統括管理部に所属。コールセンターの緊急駆付け部隊の一員としての業務と、顧客担当窓口業務を兼任している。

大成に入社して、7年目になります。もちろん部署やポジション、業務内容にもよりますが、比較的ライフワークバランスが取りやすい会社だと思いますよ。人を商品にしている企業なので、従業員を大事にする思想があるんですよね。さすがに63年という長い伝統があるので、心根が慈悲深いというか…。たまに度が過ぎたのも感じたことありますけどね(笑)。

私は新卒で大成に入社したので、あまり日中の働き方の違いを語ることはできないのですが、一般論として大きな違いといえば、雇用方式ですね。日本には終身雇用という文化がありますが、中国では契約社員が普通です。“一生ここで働く”という思考が全くないので、基本的には報酬分しか働きません。中国ではワークライフバランスをすごく大事にするので、ちょっとでも自分の意にそぐわなかったら抗議しますし、居心地が良くなかったらすぐに転職を考えます。

キャリアプランについても、日本では人事部に部署や業務が決められるため、“お任せ”な部分がありますが、中国の人事部はあくまで個人評価を行う部署なんです。なので、中国では、どちらかというと自分でキャリアプランを考えます。

でも現実的な話として、定着率ってすごく大事なことじゃないですか。だから、大成の“1人でも長く働いてほしい”という思想は素晴らしいと思います。

私は大成での外国籍総合職第1号ですが、この7年間で多国籍スタッフが働きやすい環境に進化したかというと、まだまだ改善の余地は多くあると思います。でもこの意見は、あくまでも私が置かれている状況が何も変わっていないだけ、他の部分を見られていないだけ、ということを補足させてください。

では、多国籍スタッフが働きやすい環境にするにはどうしたらいいか?これは結構根深いメンタルの部分が関わってくると思います。“郷に入れば郷に従え”ということわざがありますよね。果たしてこれは本当に正論なのか、ということです。

私も最初は、外国人が日本で働きやすいと感じるようになるためには、日本語力の向上とか、日本式の働き方についての研修を充実させたほうがいいとか、いかに早く日本になじめるように努力するか、ということばかり考えていたんです。でも、ダイバーシティ化を積極的に進めている先進企業の考え方を、経済産業省の資料などを通して学んでみたら、なんと真逆でした。日本の企業側が、もっと外国人の考え方を理解しようと努力していたんです。

私はもう来日して11年目になるので、いい感じに日本に染められていて(笑)、まさに反面教師だと思います。自分のアイデンティティがどんどん失われていっていることに、今さら気づいたんです。私は“郷に入れば郷に従え”を信じて今まで日本の社会で生きてきましたが、今後はそれではダメなのではないかと思っています。日本は労働人口が減少していく一方だから、将来的には外国人人材が欲しくてたまらないわけですよね。だったら、100%日本式に染めようとしないで、もう少し外国人についての勉強をして、異文化を受け入れてみては、と思うんです。企業自身が多様化していくことこそが、未来に向けて必要なのではないかと考えています。

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