2021年7月に持続可能な開発目標(SDGs)を中核とした新たなSDGsポリシーを掲げた大成株式会社。クリーンな水、ハイブリットな社会、フレッシュな空気をテーマとし、集大成としてサスティナブルな街づくり(エコトピア)を目指すという内容だ。
だがこの壮大なヴィジョンに対し、すべてを理解できていない社員がまだまだ多いというのが現状。新入社員となればなおさらのことだ。そこで2022年の新入社員3名が抱いた疑問や関心を、SDGsプロジェクトのリーダーである副社長に、率直にぶつけてもらった。
Profile
副社長
加藤憲博 [写真左から2番目]
外部コンサルタントによる研修や書籍など、幅広いツールから積極的に情報を収集しながら、SDGsプロジェクトのリーダーとして邁進中。プライベートではレジ袋を使わず、ゴミのリサイクルを心がけている。趣味は筋トレ。新入社員
渡利宏紀 [写真1番左]
DX事業部推進課に所属。SDGsの考え方をどう実践に移していくかを考えるべく、書籍などから情報を得て鋭意勉強中。体を動かすことが好きで、学生時代はバトミントンに打ち込んだ。肆矢凌平 [写真左から3番目]
ダイバーシティ戦略ユニット ダイバーシティ室に所属。人材採用の多様化を担う部署に配属されたことでSDGsへの関心が高まり、日々情報収集や学びを進めている。趣味はスポーツ観戦。西山瀬里 [写真1番右]
IT戦略推進室に所属。学生時代に社会学を専攻していたことから環境問題にも深い関心を寄せ、SDGs関連のニュースを積極的にキャッチするように。動画撮影が得意。
大成のSDGs宣言に対し、深堀りしたい質問が続出!
「SDGsの考え方を日常に取り入れるには、今なにをすべきですか?」
西山:まずは、当社のSDGsに対する姿勢について教えて下さい。
加藤:当社は本業であるビルメンテンス事業を通じて、環境問題と働き方改革という2つの大きな軸に配慮し、社会実現の一端を担っていくという宣言をしています。具体的な中核は、現場のファシリティマネジメントという事業を、どう持続可能な形に持っていくかということです。環境の側面だけではなく、社員の働き方にも配慮し、先端技術を組み合わせることで実現させていきたいと考えています。
渡利:SDGsという用語は広まってきてはいますが、わからない部分があるのが正直なところです。SDGsの考え方は、非日常のものとして感じるのではなく、日常に取り入れることが必要だと思うのですが、どのようなことをすべきだとお考えですか。
加藤:日常に取り入れるということに関して、いくつか例を挙げてみますね。
事業課題として、清掃時の廃液問題があります。廃液をそのまま流してしまうと地球環境に良くないですよね。そこで、清掃に洗剤を使うという当たり前に考えられている概念から変えたいと考えています。
また、SDGsは環境問題だけに即したものではなく、先端技術との融合や、ジェンダーレス問題など様々な課題があります。サービス業としてはすべての問題を解決することは難しいですが、その中でどう捉えていくかを考えた当社なりの宣言を、4つ大きく取り上げさせていただいています。
さらに、皆さんの仕事や生活の中で、意識を変えていく必要があると理解しています。例えばお客様にお配りするお水はペットボトルではなく、リサイクル紙パックを採用したり、周りのゴミを拾うなど、何か少しでも社会貢献につながることを継続すれば、自分たちも社会の一端を担っていると認識できますよね。これからは、一人ひとりがSDGsの問題を考えていく必要があるということを、浸透させていきたいです。
渡利:お話の中で、SDGsの17の目標をすべて達成するのは難しいので、せめてできることを選んで持続可能な方向へ変えていくことが必要ということだったのですが、できることを判別することもまた難しいのではないかと思います。選び方のポイントとしては、どのような方法があると思いますか。
加藤:実は外部コンサルタントの方々と共にマテリアリティ(当社の重要課題)のマトリックス指標を作り、目標に優先順位をつけています。
右上は、社会にとっても当社にとっても重要度が高いものです。5、10年後の世の中がどう変わっていくかという未来予想も考慮して、いろんな指標を組み合わせながら最終的にたどり着いたことを集約しています。
大成の集大成・サスティナブルな街づくりについて深堀り!
「エコトピアって、人が住む場所ではないんですか?」
肆矢:大成が掲げている、エコトピア構想についての概要を教えて下さい。
加藤:エコトピアは長期的な目標で、2050年を1つの節目と考えています。今、我々が行っているビルメンテナンスの仕事は、その場所に人がいなければできないのが現状です。そこを逆転の発想で、わざわざエッセンシャルワーカーが現場にいなくとも働ける環境を目指しています。30、50年先には必ずしも現場に人がいなくてもいろんな仕事ができる世の中になってくるはずですよね。誰もがどこにいても自由な仕事環境を持って、なるべく自然と親しめるような場所を体現させていきたい。仕事は必ず職場でしなければならないという価値観を変えたいんです。エコトピアを、“非日常型エコタウン”という位置づけにしているのも、人に成り代わるものが日常を作っていくという考え方です。
エコトピアでは木を植えて、自給自足や太陽光発電を見据えています。そして、そこに集いながら物事がすべて遠隔で操作できるような場所を目指しています。また、2050年までに食物、エネルギーの自給自足率100%を達成させたいというのも、大きな目標の1つです。
西山:ワクワクする目標ですね。ただ、今まで大成が行ってきたことと全然違う方向に進んでいくように思うのですが、これまで培ってきた知見や経験は、どのように活かされるとお考えですか。
加藤:これこそまさに、知見と経験がないとできないことだと思っています。人と先端技術のハイブリッドを進めていくことで、ロボティクスやIoTが物事を成していくような世界観を作りたいんです。これは、人をただ単に減らしていくと言うわけではなく、人は人にしかできないような生産性が高い仕事をするべきだということ。そうなれば、多くのエッセンシャルワーカーの方々が、現場にいかなくとも仕事ができる環境を作ることができます。これこそが、我々が求めている姿です。これまでのビルメンテナンスの経験や知識、そしてこれからの技術トライアルが全部整った上での集大成だと思っています。
西山:エコトピアというのは、人が住む場所ではないのですか。
加藤:居住空間ではなく、社員の方や地域の方がふれ合えるようなコミュニティのことです。現場でもなく、会社でもなく、コワーキングスペースでも自宅でもなく、どこにいても我々のビルメンテナンスの仕事ができてしまう…それを体験できるような世界観、というイメージです。
肆矢:エコトピアは、食物、エネルギーの自給自足率100%を目指すというお話でした。これはとても大きな目標だと感じます。その目標の大きさゆえに、大変な労力やコストがかかってくると思うのですが、エコトピアの規模感を踏まえた上で、実現する可能性が十分なものとして考えられているのでしょうか。
加藤:100%実現可能かというとまだまだ未知数ですが、できることは進めていく予定です。まずはエコトピアに向けたスタートとして、早生桐を植林する林業を始めます。これもただ環境に良いことをする、ということだけに留まるのではなく、CSVとして事業に組み込んでいくことが重要なんですね。早生桐の詳しい説明は別の記事でしますが、きちんと循環型にしてマネタイズできるような仕組みになっています。そしてこのような事業を自分たちだけのものにするのではなく、コンサルティングという形で他社にも展開させていただく方向へ舵を切っていきたいと思っています。
自給自足という面では、実は水面下で農業事業を考えています。今の日本では、食料自給率が低いことと、エネルギー資源が出ないことが弱点ですよね。これからの世代のことを考えると、食料自給率を高めることは必要不可欠ですし、自然エネルギーを自分たちで開発できるような姿をしっかり目指していきたいですね。
渡利:かなり前に、ビルの屋上で農業をしている会社の映像を見たことがありますが、あまり一般化されていないように思います。大成のホームグラウンドはビル事業なので、今後例えば屋上農業など、ビルの付加価値を上げていくような取り組みが必要なのではないかと思うのですが、何か考えていらっしゃいますか。
加藤:いいポイントですね。世の中的には、今まで考えが及ばなかったような場所であっても、作物を育ててみようという発想が少しずつ広がっています。当社が今後農業に着手していく際には、都市部でも植物や作物を育てられるような展開にしていきたいですね。これからはビルの管理だけではない様々な側面で建物の付加価値を上げていきたいので、これこそまさにSDGsを軸として進めていきたいところです。
肆矢:2050年というとかなり長期的な目標ですよね。持続可能性を考えていく上では、エコトピアによって当社にもたらせる価値を十分に考えていく必要があると思うのですが、これについてはいかがでしょうか。
加藤:今後は、人の価値を守っていきながらも、SDGsの目標に掲げられているような社会課題をどう解決していくかが大切だと思っています。それがまた新たな価値を見出していくと思うんですね。我々の経験値や品質が重なり合えば、より大きな価値を生み出していけると考えています。
西山:今回のお話は、私にとってまだ具体的にイメージができないような、新しい概念ばかりでした。今見えている段階で、実現に向けて一番大きな課題は何だと思いますか。
加藤:技術面や農業の連携、エネルギーをどう扱っていくかについては、それほど難しいことだとは考えていません。課題は社員の方々の意識と世の中の価値観が変わってくれるかどうかですね。相手にうまく理解をしていただけるかどうかは、我々の努力だけではなかなか難しいと思っています。そこは時間をかけながら、長い目で変えていきたいですね。
座談会を終えて…
渡利宏紀
自分の疑問が解決できて納得しましたし、驚きもたくさんありました。
SDGsの課題に取り組んでいくことは、大成のブランド力を向上させていく上でも重要。これからそのお手伝いができれば嬉しいです。西山瀬里
なんとなく新しい取り組みをするということはわかっていたのですが、具体的な道筋が理解できてよかったです。働くのが楽しみになりました。
新しい価値観をどんどん吸収して、引っ張っていけるような存在になりたいです。肆矢凌平
もしかしたら大成でも、“SDGsウォッシュ”のような面もあるのでは?と、少しやましいことを考えていたんです。
でも、今回心強いお言葉をいただいたことで、誠心誠意取り組もうと決意することができました。加藤憲博
お三方ともとても優秀だと思いました。非常に的確なご質問をいただきましたし、皆さんが色々と考えてくれていたこともよく伝わってきました。SDGsはこれから進めていく事業での大きな軸となり、柱になっていくはずです。今日お話した内容を頭の片隅に残していただきながら、日々の業務に努めていただければと思います。