2026.10.278.働きがいも経済成長も

「大成スポットワーク」をスタート。柔軟な働き方を支え、現場を越えたつながりを生み出す

ビルメンテナンスの現場では日々、「予定外の欠員が出た」「追加作業を依頼された」などの理由で、一時的な人手不足が発生します。一方、会社のなかには「もう少し働いて、収入を増やしたい」「他の現場も見てみたい」と考えるメンバーも多いです。

そこで大成株式会社(以下、大成)は2026年5月、人手を求める現場と働きたい社員を社内で結び付ける「大成スポットワーク」を開始しました。人手の足りない現場責任者が求人内容を投稿し、その投稿を見たメンバーが自発的に応募する仕組みです。人員調整の手間を減らすだけでなく、多様な社員が現場を越えて経験を広げたり、新しいつながりを生み出したりすることを目指しています。

制度に込めた思いや開発の舞台裏、今後の展望について、発案者である代表取締役社長CEO 加藤 憲博と、企画・開発の責任者を務めた社長室(事業戦略室)DX企画開発課エキスパート 永井 由紀子に話を聞きました。

「働きたい人」と「人手を求める現場」を社内でつなぐ

ーー2026年5月から運用を始めた「大成スポットワーク」とは、どのようなシステムなのか教えてください。

加藤:大成スポットワークは、人手を求める現場と働きたい従業員を、社内で結び付けるシステムです。各現場の責任者が、人手が追加で必要な日時や場所などの内容を投稿し、投稿内容を確認した方が応募できる仕組みです。

「大成スポットワーク」トップ画面

永井:対象は社員だけでなく、パート従業員、技能実習生なども含みます。一度、大成スポットワークに登録すれば、いつでもスマートフォンから求人検索・応募が可能です。求人情報は、勤務地や勤務日時での絞り込みができ、利用者は、気になる求人をタップすると作業内容や必要な持ち物などの詳細が確認できます。

「大成スポットワーク」募集内容詳細画面

永井:募集詳細の下には労働条件通知書が添付されており、業務内容と一緒に確認可能です。なるべく利用者にとって煩わしい操作を必要とせず、そのうえできちんと法律上問題ないフローになるよう工夫しています。労務上問題ないかは、社労士さまに何度もご確認いただきました。

マッチング成立後、ワーカー側で特別な操作をする必要はありません。スマートフォーンで専用QRコードを読み込んで打刻をすれば、翌月の給与にスポットワーク勤務分が反映される仕組みです。

加藤:業務完了後、現場責任者は業務のクオリティを5段階で評価します。評価の高い人は、年1回開催している感謝祭で表彰することも検討中です。大成スポットワークを、収入を増やすために活用でき、そのうえで会社からきちんと評価もされる仕組みにできればと思っています。

ーーなぜ大成は、大成スポットワークを開発したのでしょうか。

加藤:構想のきっかけは、人員調整に手間がかかりすぎていたことでした。

大成はビルオーナーのパートナーとして、清掃・設備管理・警備などを中心に、改修工事まで含む総合ビルサービスを提供しています。

基本的な業務は、現場の担当者だけで実行できる人員配置になっていますが、ときどき「今週中に空調フィルター清掃をすべて完了してほしい」といった追加の業務をご相談いただくことがあります。

大成スポットワークがなかったときは、調整担当のメンバーが各ビルの責任者に電話をかけ、「どなたか応援に行っていただけませんか」と聞いて回っていました。人員確保に膨大な時間と労力がかかっていたことに加え、応援に行ってもらえる方が特定の人に限られがちで、本当は働いてみたいと思っている人がいても、調整担当者にはわからないという課題がありました。

「時間が空いているからもう少し働きたい」「別の現場で働いてみたい」というメンバーの思いを汲み取りつつ、現場の人手不足を解消する仕組みがつくれないかと考え、思いついたのが大成スポットワークだったのです。

調整の手間が消え、メンバー同士が助け合う関係へ

ーー運用開始から約半年が経ちました。現在の利用状況を教えてください。

永井:具体的な検証はこれからです。現在は現場数の多い東京・名古屋エリアに限定しており、登録者は約200名ほどです。マッチングが成立した求人は50〜60件で、月に20件ほど、週に3〜4件はどこかで応募が成立しています。登録者は幅広く、入社1年未満の方から経験30年以上のベテランまでいらっしゃいます。

加藤:正直なところ、運用開始直後の利用者は少ないと予想していましたので、現状の登録者数には驚きました。また、登録者の職種の幅広さも予想以上でした。業務の特性上、どうしても清掃部門やホテル部門からの募集が多くなるので、それにともなって同業務の経験者の利用が多くなると考えていました。

しかし実際は、警備や設備の担当者の方が「他の業務を経験してみたい」という理由で清掃業務にご応募いただくようなケースも多かったです。さらに、現場責任者が「他の現場で勉強したい」と応募するケースもあり、想定以上の活用の仕方で驚きました。

ーー実際に利用した従業員からは、どのような声が届いていますか。

永井:まだスタートしたばかりであり、具体的な調査はこれからですが、今のところはポジティブな意見が多いです。実際に利用した方々から「自分の現場では使わない資機材や洗剤を扱えて勉強になった」「初めてのビルでも作業内容をしっかり教えてもらえ、迷わず働けた」といった感想が届いています。スポットワークをきっかけに「今後も応援に来てほしい」とスカウトされた人もいるそうです。

ーー会社としては、どのような成果が生まれていますか。

加藤:人員調整にかかる工数が大幅に削減できました。以前は、現場が困ると本社メンバーが調整業務をおこなっていましたが、今はシステム上で自動的に解決するようになり、大幅な工数削減につながっています。

また、大成スポットワークを介さずとも現場責任者の方が「スポットワークでよく来てくれる、あの人にお願いしてみよう」と自発的に動き、現場同士でリソースの問題を解決するケースも出てきています。

永井:求人が公開されることで、「あの現場はこんなことに困っていたのか」と全従業員が気づけるようになった点も収穫です。現場で何が起こっているのかが可視化されたことで、コミュニケーションがとりやすくなり、業務効率化やクオリティアップのための取り組みもより推進しやすくなりました。

加藤:社内で「うちの会社はおもしろい」という印象が高まったことも大きな成果だと感じています。

大成は「カタい社名で、じゆうな発想。」という言葉を掲げています。まったく前例のないところから進められた今回のプロジェクトは、まさに同コンセプトを体現する取り組みであり、理想とする仕事のあり方について、少しでも理解が深まったのではないかと思います。

また、スポットワークを通じて新しいつながりがどんどん生まれ、会社としての一体感が増したことも成果の一つです。どうしても人員が不足しがちな現場の方々が感じる不安や孤立感を少しでも払拭できたことも、よかった点の一つです。

フラットな組織だからこそ実現した、前例のない取り組み

ーー大成スポットワーク、開発の経緯を教えてください。

加藤:本格的な開発開始は2025年の春ごろですが、構想自体は数年前からありました。

ビルメンテナンス業界では一般的に、管理する建物ごとに人員計画が立てられます。また、人員は業務ごとに区切られており、基本的に業務をまたいだ人員の移動はおこなわれません。しかしそれでは、欠員が出たとき、他のセクションでリソースの余力があっても 、助っ人として入ってもらえませんでした。

また、現場同士の連携も不十分で、各現場の状況がわかりにくく、他の現場からの応援をお願いしたい場合は片っ端から連絡をするしかなかったのです。

現場で働く一人ひとりの現在の業務時間と稼働予定が見える化されれば、すべての現場で人材をシェアできる環境がつくれるはずです。それが実現できれば、非効率な調整の手間をなくせると同時に、多くの従業員がより自由に働けると考えていました。

ただ、当時の大成では、仮に完璧なシステムがつくれたとしても、理想的な人材活用はできなかったでしょう。まだまだ、縦割りの部署運営が当たり前であり、部署間連携をイメージしづらい状況だったからです。

しかし、ここ数年は大成全体で社内専用チャットツールの推進や全社で集まる感謝祭の開催などを通じ、インターナルコミュニケーションに注力してきました。その結果、「横」のつながりが強まり、部署間コミュニケーションが活発におこなわれるようになっています。

また、社長直下で部署横断的にプロジェクトを進める「社長室」を設置したこともタイミングとしては大きかったです。複数の要素が重なり、今こそ取り組むべきだと、本格的な開発を始めたのが2025年の春ごろでした。

ーー以前から構想はあり、開発のための環境が整ったのが最近だったということですね。

加藤:おっしゃる通りです。とはいえ、いくら私が必要だと思っていても、実際に使われなければ意味がありません。そこで、最初に需要があるのかを確かめるためのアンケートを実施しました。その結果、「活用したい」と答えた人が、私たちの想定を上回ることがわかりました。

理由として多かったのは、給料の面だけでなく「自身の経験・能力を広げたい」という声です。「経験したことのない新しい業務をやってみたい」と答えた人も多かったです。そのような調査結果を受けて、大成スポットワークの開発に本格的に着手しました。

永井:2025年の春ごろから本格的な検討をはじめ、秋には開発会社の選定を終えてシステム開発を始めました。同時に、就業規則や社内規定の見直しを社労士さまと一緒におこない、ある程度目処が経った2026年4月から各現場で説明会を順次開きました。

その後、5月の大型連休明けに試験運用を開始し、6月から本格運用に入った、というのが大まかな流れです。

ーー大成スポットワーク開発にあたってとくにこだわった点はどこですか。

永井:すべての関係部署との調整を丁寧に進めることです。実際にシステムを利用する各事業部はもちろん、人事、総務などバックオフィス部門とも密に連携をとりながら開発を進めました。

社内専用のスポットワークシステムの開発は、大成社内だけでなく、世の中的にもまだ前例の少ない取り組みです。本当に使われるのか、どうすれば法律上問題ないか、会社全体の残業時間を増やすことにはならないか、など自分一人では見えない幅広い視点から考える必要がありました。だからこそ、各分野のプロフェッショナルである方々に「こういうことをやりたいのですが、懸念は何かありますか」と慎重に確認をしながら進めたのです。

とはいえ、ただ質問するだけでは相手も答えられません。具体的な運用フローを先につくり、それを見せながら挙がってきた検討事項を一つずつ解決していきました。その結果、労働条件通知書の自動発行機能、現場ごとの残業実態に合わせてスポットワーク可能時間を個別に設定できる機能など、本当に必要な機能を実装できたのだと思います。

もう一つ、こだわったのが、徹底的に使いやすいUIにすることです。現場で働く皆さんのなかには、日頃からシステム操作に慣れていない方もいらっしゃいます。デモの段階から実際に使う方々に「使いやすいフローか」「見やすい画面か」を何度も確認しました。

登録者500人、そして現場の外へ。働き方の選択肢を広げ続ける

ーー今後の展望を聞かせてください。

加藤:まだ始まったばかりですので、ひとまず直近の目標は、登録者数をパートさんも含めた従業員の10分の1である500名程度まで増やすことです。

そのためにも、東京・名古屋エリアに限定している利用範囲を広げたいと考えています。すでに要望の強い大阪エリアでは、早ければ2027年の年明けから利用可能にする予定です。

さらに、今は実際に現場で働くファシリティマネジメント関連の業務が中心ですが、今後は繁忙期のバックオフィス部門をはじめ、より幅広い業務をスポットワークとして登録できるようにしたいとも考えています。すでに複数の部署から「うちの業務も募集していいですか? 」と問い合わせが来ていますので、その声に応えていきたいです。

永井:大規模なシステム拡大と同時に、日々のシステム改修も積み重ねていければと考えています。直近だと、一目で何の募集かわかりやすいように「清掃」「警備」など、業務ごとに自動でアイコンがつく開発を進めています。ありがたいことに、現場から「こういう表示に変えられませんか」といった意見を多くいただいており、それだけ皆さんにご期待いただいているのだと感じていますね。

加藤:将来的には、スポットワーク利用者から業務内容へのフィードバックを送信できる機能の実装も考えています。

永井:今は、スポットワーク終了後、現場管理者からワーカーに対する評価しかできませんが、ワーカー側から「控え室は清潔だったか」「責任者の説明は丁寧だったか」と現場を評価する機能も実装できればと考えています。

そうすることで、現場責任者は改善点に気づけ、会社全体の業務改善がさらに進むと思います。

加藤:他にも、大成スポットワークはさまざまなことに活用できるシステムです。たとえば、社内イベントの告知です。大成では、全社行事以外にも、有志で集まるイベントがいくつかあります。その告知も、業務募集とは区別できる見た目で掲載できるようにしたいと考えています。

最終的には、大成スポットワークを「おもしろいものが、ちりばめられている場所」と社内で認知してもらうことが目標です。そのために、これからもアップデートを続け、大成で働く誰もが利用するシステムに育てていきたいです。

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