ビルメンテナンス業から始まり、さまざまな領域への事業拡大を実現させてきた大成株式会社。2021年には「私たちのSDGs宣言」を掲げ、企業活動を通じた社会貢献を経営方針の中核に据えました。さまざまなSDGs関連プロジェクトを進めるなか、2022年5月に三重県いなべ市の山林にて植林を実施し「早生桐プロジェクト」がスタートしました。
そして2025年12月、約3年半を経て高さ10メートル超えの早生桐を2本伐採し、木材へと加工。本格的な伐採を前に、品質確認を実施しました。今回の確認をきっかけに、いよいよ本格的な「環境家具」づくりがスタートします。
プロジェクト発足当初から携わる方々に、これまでの軌跡や現状、今後のビジョンについて話を聞きました。

ーーこれまでのプロジェクトの活動内容を教えてください。
山内:基本的には現地に通い続け、苗の状態確認と改善の繰り返しでした。
とくにプロジェクト初期はまだ苗が小さく、環境による影響が大きかったので、月に何度も現地に行きました。生育状況の確認と肥料散布を高頻度でおこない、とくに繊細にケアをしました。
ある程度苗が大きくなってからは現地に行く回数を月1回程度に減らし、樹高測定や枝切りといった管理作業中心に切り替え、それは今も続けています。

ーー改善を繰り返したとのことですが、具体的にはどのようなことに取り組んだのでしょうか。
山内:数えきれませんが、とくに大きかった改善としては、2024年1月から4月にかけて実施した土壌改良があります。
私たちの植林地は、場所によって土壌に含まれる栄養が大きく異なりました。そのため、早生桐の成長スピードに差が出ていたのです。そこで、改善のために500本以上あるすべての桐の周囲に4か所ずつ穴を掘り、竹炭と堆肥と枯れ葉を投入しました。
大変な作業で、私たちだけでは難しかったので社内で有志を集め、非常に多くのメンバーに協力してもらいながら作業を進めました。

その結果、成長が止まっていた早生桐も回復し、夏場には月に1メートル以上も伸びるようになったのです。
もう一つの大きな取り組みは、水路の敷設工事です。もともと敷地内に井戸はありましたが、頻繁に枯渇し、水の供給の不安定さが課題でした。そこで地元の業者さんにお願いして、遠方の水源から配管を引くという、かなり大掛かりな工事をおこないました。想定以上の規模となりましたが、将来を見据えた重要な投資でした。
2025年9月に開始した工事は、2025年11月に完了し、現在は安定した水の供給が実現しています。
ーー3人はプロジェクト開始から現在まで3年以上、早生桐プロジェクトに携わっています。とくに大変だったときはありますか?
肆矢:私は、なんといっても土壌改良のための穴掘りですね。
桐の周囲に穴を掘る作業がとにかく大変で、500本の桐に対して4か所ですから、合計2,000か所の穴を必死で掘りました。当日用意できた電動ドリルは1台だけで、ほとんどの穴は手回し式ドリルで掘る必要があり、場所によっては土が固くて非常に苦労しました。

散布する竹炭も重く、当日は作業に参加したメンバーが全員無言になるほど疲弊していたのを覚えています。

青木:あれは大変でしたね…。一部作業については、縁あって三井住友銀行さまにもお手伝いいただきましたが、みなさま大変そうでした。「木を育てることがどれほどの大変か身をもって体験した」「大成のSDGs活動の意義や大変さをより深く理解できた」などの感想をいただいています。

当日の様子や参加者の声については下記記事も併せてご覧ください
✅【大成×SMBCグループ】早生桐プロジェクトから広がる、大成のSDGs
私がとくに印象に残っているのは、台風後の後処理です。
植林地は獣害対策のために設置されたフェンスでぐるっと囲われており、そのフェンスを通り抜けるかたちで川が流れています。普段はフェンスの網目から水が流れるので問題ありません。しかし、台風後は川に流木や土砂が大量に流れ込み、それらがフェンスに詰まることで氾濫の原因になるのです。
あるとき「いなべが大変なことになっている」と連絡が入り、私と肆矢さんとで現地に駆けつけました。見ると思っていたよりも大変な状況で、びしょ濡れになりながらフェンスに引っかかった流木を撤去し、傾いたフェンスの補修もおこないました。

山内:自然が相手である以上、予期せぬ出来事は避けられません。天気以外にも、鹿に若葉を食べられたり、猿に枝を折られたりといった獣害にも苦しめられました。トラブルがあるたびに対策を打ち、少しずつ今の植林体制を構築していきました。
植林経験のなかった私たちにとって、早生桐プロジェクトは、試行錯誤の連続でしたね。実際に現場に立ち、日々自然と向き合いながら作業を重ねる中で、その大変さや難しさを身をもって実感しました。
ーー2025年12月、初めての伐採をおこないました。改めてどのような経緯だったのか教えてください。
山内:今回の伐採はあくまでも調査が目的です。通常の桐は木材に使える大きさになるまで20年ほどかかりますが、早生桐は約5年で伐採可能になります。来年以降の本格伐採を前に、板材加工が可能かどうかを調べるための伐採でした。
伐採は三重県内の業者さまに依頼し、丸太の加工、その後の板材への加工までお願いしています。今回は2本だけ伐採し、1本はそのまま自然乾燥に、もう1本は3週間ほど川に浸けて水中養生してから乾燥させる方法を試しています。
乾燥は機械ではなく自然乾燥を選択しました。時間はかかりますが、SDGsの観点からなるべく燃料を使わないようにしたかったことに加え、自然乾燥の方が木目の風合いや香りに優れることが理由です。これから、約1年間、乾燥をさせながら仕上がりを観察します。

ーー早生桐を初めて木材にした感想を教えてください。
山内:そもそも木材の伐採を目の前で見るのが初めてで、迫力に驚きました。また、3年半かけて育てた木が、ようやく木材になるのかと感慨深い気持ちにもなりました。

青木:私にとって印象的だったのは、丸太加工の際に切った枝でつくったコースターです。手にしたとき、自分たちの育てた桐が形になったという実感がわきましたし、見た目が美しく、製品としてのポテンシャルも感じられる仕上がりでした。

肆矢:私もコースターは気に入っています。デスクのそばにずっと置いています。もらった当初は水分を含んでいた木が、時間経過とともに乾燥していく変化を感じられるのはおもしろい体験でした。
ーー3名は約5年間、主業務と並行して本プロジェクトに携わり続けています。一つのプロジェクトを長く続けることは、大変ではなかったのでしょうか?
山内:大変でしたが、私の場合は、プロジェクトに携わるうちにどんどんおもしろくなっていきました。木の成長にとって最適な環境についてどんどん興味がわき、最近ではカーボンニュートラルにも関心をもっています。
とくに今は、私たちの桐が「実際にどれほどCO2を吸収しているのか」に興味があります。早生桐はCO2の吸収量が他の木の約10倍とされていますが、本当か調べたいです。具体的な数値を算出できれば、会社のCO2排出量削減の根拠として使えるかもしれません。
プロジェクトに携わるほど新しい領域に触れ、世界の広がりを感じ、それがやりがいにつながっています。
肆矢:私の場合は山内さんほど頻繁に現地に通うわけではなく、人手が必要なときのサポート業務がメインです。そのような携わり方だからか、会社が力を入れるビックプロジェクトではありますが、私にとっては仕事の「息抜き」になっています。
自分の身長を余裕で超えるような木を育てる経験は、他ではなかなか味わえません。現地に行って体を動かすたびに、「また頑張ろう」と前向きな気持ちになれますね。
青木:私は子どもが今ちょうど5歳で、早生桐プロジェクトの開始時期と重なります。鹿に苗を食べられたときは本当に悲しくなりましたし、5年間ともに過ごしてきたぶん、切っても切れない存在です。
ビジネスとして成立させることはもちろんですが、同時に愛情をもって取り組み続けたいです。
ーー今回伐採した木材は今後どうなっていくのでしょうか?
山内:約1年間自然乾燥させ、その後改めて材質を調査します。2026年12月ごろには検査結果が出る見込みです。
並行して、残り約500本の活用方法についても検討を続けます。当初の予定通りすぐに伐採して家具を製作するか、育て続けてCO2削減を目指すか、どちらがより環境に貢献できるか検討中です。
また、木材への加工過程で出てくる端材も廃棄せずにチップ化し、バイオマス燃料や肥料に活用し、廃棄物ゼロを目指す方針です。
さらに、来シーズンの伐採を見越した準備も始めたいです。
桐は「萌芽更新」という性質があります。伐採後に切り株から新芽が出てきて再び成長し、1本の桐からおよそ5回木材を収穫できます。今シーズンの試行錯誤を活かし、来シーズンはさらに強い木材を育てるために、準備を進めたいです。
ーー本プロジェクトの今後の展望を教えてください。
青木:大成はSDGsポリシーとして「ファシリティマネジメント事業を通じて、環境と働き方改革に配慮した社会の実現の一端を担います」を掲げています。本プロジェクトはまさに「環境に配慮した社会の実現」のための活動ではありますが、同時に、将来的な事業の柱になる可能性があると思っています。
自社で育てた早生桐を使った環境家具「furniTure(ファニチャー)」や、それを軸としたオフィス空間「T-GARDEN」は、私たちが長年取り組んできたオフィス環境づくりの一つの集大成です。自社への導入を検討する企業さまも多いのではと考えています。実際、プロジェクトの話をすると、多くのクライアントが興味を示してくださいます。
今回の調査をベースに製品化を進め、まずは質感を直接確かめていただけるサンプルを早めにつくりたいです。その出来上がったサンプルを手に、興味をもっていただいている方々に具体的なお話ができればと思っています。
加えて事業面だけでなく、温室効果ガス排出量削減というかたちでの、非財務情報へのインパクトも狙いたい効果の一つです。早生桐を通じたCO2削減実績を可視化し、温室効果ガス排出量削減にも貢献できればと考えています。
この5年間で得た経験値とノウハウをベースに、取り組みを継続し、その先にある、循環型社会のモデルづくりを実現させたいです。
