2025.01.0912.つくる責任つかう責任15.陸の豊かさも守ろう

SDGsプロジェクトから、新しいプロダクトが誕生。きっかけは一人の「もったいない」だった

2021年に「私たちのSDGs宣言(以下、SDGs宣言)」を掲げ、サステナビリティを重視した経営体制へと本格移行した大成株式会社。同宣言内で掲げる目標の一つに「早生桐苗を2026年までに4ha、2400本植林」があります。

2022年5月、三重県いなべ市での植林からスタートした本プロジェクトは、さまざまな困難に直面しながらも、着実に前に進められています。そして2024年、早生桐の廃材から抽出したオイルからつくる、アロマフレグランスが誕生。なぜ、植林プロジェクトから新しい製品が生まれたのか、早生桐プロジェクトの現状と合わせて、担当者の酒井 菜那さんに話を聞きました。


 

さまざまな困難を乗り越えて、大きく成長した早生桐

——あらためて「早生桐苗プロジェクト」とは何かを教えてください。

酒井:私たちが展開する、木材と紙を主材料にしたオフィス家具シリーズ「furniTure」の材料となる早生桐(そうせいぎり)を、2026年までに4ha、2400本植えることを目指すプロジェクトです。早生桐は、CO2の吸収量が他木の10倍もあり、通常の桐が20年程度で成木になるところ4~5年で成木になる特徴があります。

当社では、植林から自社で手掛け、資源を循環的に利用して廃棄物を最小限に抑え、環境負荷を軽減するサーキュラーエコノミーの実現を目指します。

(プロジェクト立ち上げの目的や思いについては、こちらもご覧ください)

 

——早生桐苗プロジェクトの、現在の進捗について教えてください。

酒井:2026年に2400本という目標に対して、現在は約675本(2024年12月時点)という状況です。右も左もわからないなかで植林を始め、さまざまな問題が起こりましたが、そのたびに乗り越え育成をおこなってきました。

とくに大変だったのは、鹿被害と土壌の栄養不足です。鹿被害とは、植林地近くに生息する鹿に、苗を食べられてしまうことです。初めて植林をして1週間後に新芽を食べられ、幹を切って回復を促す「台切り」という処置を、約9割の苗でおこないました。


▲鹿に新芽を食べられてしまった苗

同じ被害に遭わないよう、フェンスや防護ネットを設置し、対策をおこないました。

また、土壌の栄養不足も大きな問題でした。植林から1年目、全体的に育ちが遅かったことから土壌調査をおこなうと、土質の悪い場所があるとわかりました。そこで、成長している苗と、枯れている苗の分布図を作成し、成長促進のための肥料を入れて回り、土質改善をおこなったのです。

 
他にも、台風被害や害虫被害など、さまざまな問題が起こりましたが、一つひとつ乗り越えてきました。その結果、現在は順調に成長している苗も多く、一番大きく育っている桐は8メートルを越えるほどになっています。

 

 

折れてしまった枝から生まれた、アロマフレグランス

——アロマフレグランスが生まれた経緯を教えてください。

酒井:プロジェクト開始当初、早生桐の使い道は家具だけを考えていました。しかし、どうしても適さない曲がった枝が出てしまい「もったいないな、何かに活かせないかな」と悩んでいました。

そのとき、フレグランス事業を共同で進めていた企業さまから「早生桐からオイルを抽出できるかもしれません」とご提案いただいたのです。私たちとしては、願ってもない提案で、ぜひとお願いして始まったのがアロマフレグランスづくりでした。

 

——今は、どのような状況なのでしょうか?

酒井:すでに第一弾は完成しています。今のところは商品として販売をするのではなく、ノベルティとしてお付き合いのある企業さまにお配りしたり、イベントで配ったりする予定です。もし、反響がよければ今後の展開も検討するつもりです。


▲スプレーボトルに詰められたアロマフレグランス(左)。ハンドクリームも一緒に作成し、ノベルティとして配られた

 
——完成したアロマフレグランスは、どのような香りなのでしょうか?

酒井:言葉で説明するのは難しいですが一般的なディフューザーと比べて、木の匂いが強く、自然を感じる香りになっています。桐だけの香りだと、強くなりすぎるため、大成がオフィスづくりで活用している既存のアロマと混ぜることで、嗅ぎ心地のよい香りに調整しています。

お客さまが自社のオフィスで使うことを想定しており、働く人がリラックスできる香りを目指しました。少しでも、オフィスワーカーのパフォーマンス向上に貢献できればと考えています。


 

世代を超え、受け継がれ続けるプロジェクトを目指す

——アロマフレグランスは今後、商品化もありえるのでしょうか?

酒井:もし、お客さまからの反響が大きければ、検討します。ただ、アロマフレグランスにこだわるというよりは、家具にならない木材の他の使い道がないのか、模索し続けるつもりです。

木材をチップにして、発電燃料として使ってもよいかもしれません。他のメンバーからは、ペンや万年筆といったおしゃれな文房具や、オフィスでも使えるコースターなどの案が出ています。幅広いプロダクトを視野に入れ、多くの人に求められる商品を生み出したいです。さらにいえば、「大成がつくる意味」も備わった、プロダクト開発ができるといいなと思っています。

——最後に、早生桐苗プロジェクトの今後の展望について教えてください。

酒井:まずは、今進めている三重県いなべ市での植林に注力し、木材として使える丈夫な木を育てることが目標です。さらにその先は、積み重ねたノウハウを活用し、まったく新しい土地への植林も検討する予定です。

本プロジェクトを通して、地球環境への貢献はもちろん、大成が「おもしろいチャレンジをしている会社だ」と知ってもらうことにも、つながればいいなと思っています。大成は今、「サービスをデザインすることで、社会に”喜びと感動”を提供します。」をミッションに掲げ、さまざまな取り組みをおこなっています。新しいことをやっている会社だと、言われることも増えましたが、まだまだ道半ばです。自社の考えを体現する取り組みの一つとして、本プロジェクトを続けられればと考えています。

個人的には、2022年より始まったこのプロジェクトが30年先、40年先と、世代を超えて受け継がれるといいなと思っています。私に限らず、プロジェクトに関わる多くの人の思いを乗せて、ずっと未来まで続く取り組みになるとうれしいです。

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