2024.07.128.働きがいも経済成長も

【進捗報告】「私たちのSDGs宣言」から3年。社長に聞く、現在地とこれからの展望

2021年、「私たちのSDGs宣言(以下、SDGs宣言)」を掲げ、サステナビリティを重視した経営体制へと本格移行した大成株式会社。洗剤使用量削減、持続可能な社会インフラの構築、サスティナブルなまちづくりなど、複数のプロジェクトに同時に取り組む。

宣言から約3年が経った今、どのような進捗があったのか。取組を始めて会社は何が変わったのか。代表取締役社長、加藤 憲博に聞いた。

これからも、大成が社会に貢献し続けるために「私たちのSDGs宣言」を制定

-あらためて、SDGs宣言を発表した背景について教えてください。

大成がこれからも、社会に対して価値提供を続けるために、今一度自社のスタンスを示す必要があると考えたことが、SDGs宣言を発表した背景にありました。世界の持続可能性に貢献をすることが、結果的には、我々自身の持続可能性にもつながると考えています。

取組内容は、大きく2つの観点から検討しています。

まず一つは、地球環境への配慮です。とくに製造分野では、原料消費やゴミ排出など、地球環境に少なからず影響を与えます。そのような業界に関わる我々としては、地球環境への配慮は欠かせません。具体的には、洗剤使用量の削減や植林などの取組を設定しています。

もう一つは、働き方改革です。大成のメイン事業であるビルメンテナンス事業は、これまで人に頼り切って業務が成り立っていました。しかし、労働人口が減少する、これからの時代では過去と同じやり方ではうまく回っていきません。そこで、足りなくなった人手をまかなうための、システムやロボットの導入・開発を推進しています。人の価値を最大限に引き出しつつ、労働力不足で疲弊する現場を助けることに貢献できればと考えています。

進捗①洗剤使用量の削減

-SDGs宣言で「私たちが取り組むこと」として挙げているそれぞれの項目について、現在の進捗を教えてください。

 

当初の想定では、2022年度に技術力のあるスタートアップと手を組み、新しい清掃手法を開発するつもりでした。しかし、多くの会社さまに相談をしたり、自分たちで新しい洗剤料を試してみたものの、抜本的な方法は見つけられていないのが現状です。今は、「強アルカリ電解水」を導入するなどそれぞれの現場で小さな改善を積み重ね、少しずつ数字を改善している状態です。

試行錯誤を繰り返すなか、洗剤ではなく水に着目し、水の中にナノレベルの細かい泡を発生させる技術に注目をしました。細かい泡を使うことで、清掃品質を維持したまま、少ない洗剤量で汚れを落とせます。この技術を活用した新事業「T-Bubble」の立ち上げも進めているところです。本来の想定とは違いますが、T-Bubbleが普及すれば、洗剤使用量削減にもつながると考えています。

引き続き、T-Bubble以外にも、目標達成のための起爆剤となるような技術を探す予定です。やり方さえ確立できれば、我々が管理する現場に導入をするだけなので、目標数値の達成はできると考えています。

(洗剤使用量の削減のための取り組みについては、下記記事をご覧ください)


細部までSDGs Action!〜地球に優しい洗剤とは〜

進捗②ハイブリッド(ヒト×IoT)な社会の実現

 

警備アバターロボット「ugo」は、数字だけ見ると大きくビハインドしているように見えますが、まだそこまで慌てる状況ではないと捉えています。

世の中で開発が進められている警備ロボットの多くが、実証実験フェーズで終了しているなか、ugoは実際に各施設で稼働を開始しています。実働によって得られたデータを分析し、さらにロボットの性能を高め、より多くの企業さまに導入いただきやすくブラッシュアップをしているところです。

(ugoの具体的な性能については、下記記事をご覧ください!)


人間とロボットの共存は可能か〜警備ロボットugoの活躍〜

 

加えて、ugo普及のためのルートも整備しています。具体的には、全国にugoの販売代理店をつくることを検討しています。代理店に名乗りをあげてくれた企業さまには、我々のもっている施設管理ノウハウをお伝えさせていただき、我々が関わらずとも販売・運営をできるようにする予定です。すでに数社ほど代理店に加盟いただけることが決まっており、引き続きご協力企業数を増やしていければと思っています。

次世代受付システム「T-Concierge」についても、今はまだ導入数が少ないですが、今後拡大する兆しが見え始めているところです。

T-Conciergeは、遠隔からテレビ電話方式による来客対応がおこなえるシステムです。受付スタッフはモニター越しに相手を見ながら対話ができます。企業の人手不足やコスト削減、働き方改革のためにと開発をしたサービスであり、最初は企業に対して提案をしてきました。

しかし、自治体からの問い合わせが多く、人里離れた場所での観光案内的な役割に、ぴったりのソリューションだと気がつきました。今後は、多言語対応といった新機能も実装しつつ、インバウンド観光客にも備えられるサービスとして、オフィス以外の場所でも導入を目指す予定です。

マルチプラットフォーム「T-Spider」に関しては、実はまだパイロット版で、2024年の秋頃から本格稼働に切り替えるフェーズです。すでに導入されている管理物件からのフィードバックをベースに、システム改良を行い、本格稼働のタイミングでガツンと普及させられればと考えています。

進捗③オフィス環境づくりと、早生桐苗の植林

 

オフィス環境づくりについては今のところ達成度50%ですが、当社の東京本社および名古屋本社を未来型オフィス「T-GARDEN」へとリニューアルしたことで、興味をもってくれるお客さまが増えました。

(未来型オフィス「T-GARDEN」については下記記事をご覧ください!)


「BORDERLESSからSEAMLESSへ」名古屋本社リニューアル

 

移転の予定がないお客さまに対して、オフィスリニューアルの提案を積極的におこなうことは難しいですが、我々のオフィスが来社いただくお客さまの目に触れることで、コンセプトについて知ってもらう機会を増やせていると感じています。すでに何社か、オフィスリニューアルを前向きに検討しているお客さまも生まれている状況です。

早生桐苗の植林については残り2.25haで、土地さえ見つかれば達成できる状況です。ただ、植えるだけでなく、強い木材に育てるところまで考えると、クリアしなければならない課題があると感じています。

2022年に、実際に大成メンバーで早生桐苗を植えている様子実際に、三重県いなべ市に植林をした際は、小さい苗を野生のシカが食べてしまうという獣害が起こりました。生き残った苗も、葉っぱをかじられ、十分な成長ができない状態でした。そこで、苗を植えた翌年に、もう一度苗を植え直し、その後も定期的に通ってメンテナンスをしています。そのような学びを踏まえ、苗の育成に最適な環境を検討しているところです。

進捗④エコトピア構想

最後は、エコトピアについてです。

これまで説明してきた取組の集大成として、2050年までに食物、エネルギーの自給自足率100%の街「エコトピア」をつくる予定ですが、正直なところ、まだ実現までは遠いと考えています。エコトピアの実現には、大成メンバー一人ひとりが、今よりもさらにSDGs宣言の達成に向け、意欲的に取り組むことが重要だと感じています。

私自身、この3年間での一番の反省は、自社メンバーの巻き込みが足りなかったことでした。SDGs宣言の制定に携わったメンバーは、達成に向けて高い意識をもっていますが、それ以外のメンバーにどこまで、SDGs関連の取組を浸透できたのかには疑問が残ります。社内への情報共有をさらに積極的におこなっていきたいです。

さらにまちづくりほどの規模となると、我々が意欲的なだけでは難しいと思っています。お客さまはもちろん、社会全体にも我々のやりたいことを認めてもらわなければなりません。会社、お客さま、社会と3つのステークホルダーのそれぞれを成熟させ、多くの仲間と協力しながら、エコトピアの実現に向けて歩みを進めていきます。

 

(エコトピア構想の詳細については、下記記事をご覧ください!)

2022年の新入社員3人が副社長にASK!「SDGsポリシーとエコトピア構想についてホントのこと教えてください」

数字で示し続けるから、実現可能性を高められる

-どの項目も明確に数字で管理しています。定量的な目標設定にこだわったのはなぜなのでしょうか?

具体的な数字を目標にした方が、達成確率が高まると考えたからです。数字にすることで、厳しい現実を突きつけられることにもなります。しかし、どうすれば事態を変えられるのかと、知恵を絞りやすくもなると思うのです。

また、数字にすることで外から見ても進捗がわかりやすくなることも重要だと考えています。たとえば洗剤の使用量削減の現状を見て、「うちの技術ならこの水準まで実現できます」といった連絡をもらいやすくなります。

これからも目標数字を追いかけながら、そのプロセスを社内外に発信し続けられればと思っています。仮に順調に進捗をつくれなくても、発信をし続けることで仲間を増やせます。また、「洗剤を減らすことって、これほど難しいことなんだ」といった気づきを与えられること自体も、価値のあることだと考えているのです。

ダイバーシティ、採用、売上、ブランディングなど、多くの面で感じるポジティブな影響

-サステナビリティ重視の経営へ移行したことにより、変化を感じることは何かありますか?

いくつもありますが、大成自体がより働きやすい環境へとシフトできたことが大きかったと思います。ダイバーシティ部の新設、フレックス制度導入、障がい者雇用など、多様性を認める職場環境に近づいていきました。

職場環境の変化にともなって、採用活動にもポジティブな影響がありました。多様性を認める環境があること、いろいろな働き方ができることを知ってくれた求職者の方々から「おもしろい会社だ」と認識してもらえることが増えたのです。会社説明会を聞いて、選考に進む人の数はSDGs宣言前と比べて増えたと思います。

もちろん、売上に対する影響も大きいです。そもそも、SDGs宣言で掲げている目標自体、売上に直結しているものが多いです。ハイブリッドな社会を実現させるために、ロボットやシステムを普及させられれば、必然的に事業拡大にもつながります。

洗剤使用量の削減は、一見すると売上とは関係のない項目のように思えるかもしれません。しかし、洗剤使用量が減ったり、効率のいい清掃方法を発見したりできれば、それだけ原価低減につながります。売上が変わらなくても、原価が下がることで利益が増え、これもまた事業拡大につながるのです。

総じて、SDGs宣言のおかげで、社会から見た大成の印象が少しずつ変わってきていると感じます。実際に他の企業さまから「大成さんに、SDGsに関するレクチャーをしてほしい」とお願いされたケースもあります。メディアで取り上げられる機会も増えました。これまで以上に多くのステークホルダーに、会社のことや経営理念について知ってもらえるようになったと感じています。

変化する世界に合わせてサービスをデザインし、喜びと感動を与える会社であり続ける

-これから先、未来はどのような姿に変わるのでしょうか?加藤さんの未来予想図を教えてください。

難しい質問ですね…。

私はもしかすると、オフィスそのものの需要がなくなる日が来るかもしれないと考えています。労働人口減少や働き方そのもののシフトチェンジにより、働く場所自体が今ほど求められなくなると思うのです。

その結果、一部の駅周辺にオフィス機能がギュッと集約され、それ以外の場所は、これまで思いつきもしなかったような使われ方をするのではないでしょうか。流動的な人の動きに合わせて、コミュニティ関連施設も増えると考えています。

また、オフィスだけでなくホテルのあり方も大きく変わり、簡単に言うと「二極化」が起こると考えています。最高級のサービスを多くの従業員を雇って提供するセレブ向けのホテルと、極限までコストを抑え、フロントも無人の、安価で宿泊できるホテルです。

さまざまな可能性に備えて、我々としてはあらゆる業種に対して、プラスの提案ができるよう準備を進めたいところです。今の日本に合わせたソリューションを確立できれば、将来的には、日本と同じフェーズに入った国に対してもサービス提供ができるようになります。日本国内にとどまらず、グローバルに活躍する会社へと進化をさせたいです。

 

大成は経営理念に「サービスをデザインする」という言葉を使っています。「変革」だと、今の状態から変わらなければならないと、身構えるところもありますが、「デザイン」はもっと軽やかです。ほんの少し手を加えるだけでもデザインであり、そのやり方には無限の可能性があります。SDGsに限らず、今のサービスのかたちを時代に合わせて少しずつデザインしながら、多くの人に喜びや感動を提供できる会社であり続けたいです。

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